診療案内-感染症-

感染症は無症状や軽い症状しか起こさないケースもよくあります。なんだかおかしいなと思ったら、お気軽にご相談ください。

さまざまな感染症についてご説明しています。

細菌性腟症

健常な女性の腟には様々な常在菌が存在しています。そして、その大部分はLactobacillus(ラクトバチルス=乳酸菌)属で腟内を酸性に保ち雑菌の侵入を防いでいます。
しかし、免疫力低下などの原因でLactobacillus属が減少し、種々の菌が増殖したものを細菌性腟炎と言います。約半数は無症状ですが、おりものの異常やにおいなどがある場合もあります。

カンジダ腟炎

カンジダ属は皮膚や腟などに広く常在しています。免疫力低下、抗生剤使用などによって常在菌が減少して、カンジダが増殖するとカンジダ腟炎を引き起こし、かゆみやおりものの異常を認めます。

カンジダ腟炎になってしまった時の注意点
  • 局所の清潔を保つよう心がけましょう。
  • 刺激性の石鹸の使用を控えてください。※当クリニックでも刺激の少ない石鹸をご用意しています。
  • 通気性の良い下着を使用してください。
  • 症状がみられる間は、性交渉を避けましょう。

腟トリコモナス

性行為により感染する以外にも、便器、浴槽、タオルなどからの感染もあります。
おりものの増加やにおい、かゆみなどの症状がでることもありますが、無症状のこともあります。

クラミジア

主に性行為により感染し、感染後1~3週間で発症します。多くの場合無症状ですが、おりものの増加、不正出血、下腹痛、性交痛などがでることもあります。放置すると子宮外妊娠、不妊など重篤な合併症を生じる可能性があるので注意が必要です。クラミジア感染者の10~20%に咽頭からクラミジアが検出され、10%は淋菌感染を合併しているという報告があります。ご希望があれば、咽頭の検査も行っています。

淋菌

主に性行為により感染し、多くの場合、無症状です。おりものの増加、不正出血、下腹痛などがでることもあります。男性は感染後2~7日の潜伏期間ののち発症しますが、女性は無症状のケースが多いため潜伏期間ははっきりしません。
放置すると子宮外妊娠や不妊など、重篤な合併症を生じる可能性があります。また、淋菌感染者の10~30%に咽頭から淋菌が検出され、20~30%はクラミジア感染を合併していると言われています。ご希望があれば、咽頭の検査も行っています。

HIV

日本では未だにエイズの原因であるHIVの感染者が増え続けています。
HIVは本来感染力の強いウイルスではありませんが、クラミジア・淋菌・性器ヘルペス・尖圭コンジローマ・梅毒などの感染者はHIVに感染しやすいと言われています。
腟性交以外に、オーラルセックス(クンニリングス・フェラチオ)やアナルセックスでも感染します。
HIV感染症は治療開始の遅れが生命予後の悪化につながるため、早期発見がとても大切です。感染していた場合、1ヶ月くらいから陽性になりますが、個人差もありますので1ヶ月目での検査で陰性であっても3ヶ月以降の再検査をおすすめしています。

梅毒

昔の病気と思われがちな梅毒ですが、近年感染者が増えています。性行為により感染する慢性感染症で、トレポネーマが血行性に全身へ散布されて様々な症状を引き起こします。症状が認められず、梅毒血清反応だけが陽性にでる無症候性梅毒というケースもあります。

第1期(感染後3週間) 外陰部・口など感染した部位にできものや潰瘍ができますが、放置していても2~3週間で消失します。
第2期(3ヶ月~3年) トレポネーマが血行性に全身へ散布され皮膚や粘膜に発疹ができます。
第3期(3年~) ゴム腫と呼ばれる腫瘤が現れることがありますが、現在ではほとんど見られません。
第4期 神経症状や心血管症状が現れることがありますが、現在ではほとんど見られません。

B型肝炎

性行為、輸血、針刺しなどで感染し、免疫系が発達した成人では急性一過性感染で終わりますが、ジェノタイプA型と呼ばれるB型肝炎ウイルスに感染すると慢性化することもあります。慢性化すると将来、肝硬変や肝がんへと進展する可能性があります。

C型肝炎

B型肝炎と比べると感染性は低いとはいえ、性交渉も感染経路の一つになるC型肝炎。30~40%の人は感染しても自然治癒しますが、60~70%の人は慢性肝炎となります。放置しておくと将来、肝硬変や肝がんへと進行していく可能性が高くなります。

性器ヘルペス

外陰部や口から単純ヘルペスウイルス(HSV)が放出されている人との接触によって、2~10日間の潜伏期間後に発症します。主に性行為が原因ですが、それ以外にウイルスがついた手やタオルなどを介して感染する可能性もあります。感染源となったパートナーに症状がないこともしばしばありますのでご注意ください。
感染すると、はじめ違和感やかゆみが生じて、やがて痛みとなり、その後、水疱や潰瘍などが出現します。発熱や鼠径リンパ節腫脹(足の付け根の痛み)を伴うこともあります。
一度感染すると症状が治まってもウイルスは生涯にわたって神経節に潜伏して、免疫力の低下、性交渉や紫外線など外部からの刺激、ストレスなどが引き金となって再発します。ただし、再発時には初感染と異なって症状は軽く、治るまでの期間も短くなります。
年6回以上再発を繰り返す場合には、抗ヘルペスウイルス薬を1年間継続内服する再発抑制療法を行うことにより、再発を少なくする効果が期待できます。

尖圭コンジローマ

大部分が性交渉による感染で、ヒトパピローマウイルスが皮膚や粘膜の微小な傷から侵入して感染します。見た目で確認できるまでに3週~8ヶ月を要し、一般的に自覚症状はありませんが、かゆみや痛みを伴うこともあります。外陰部の尖圭コンジローマの40%が子宮頚部にも病変を形成します。当クリニックでは、イミキモド5%クリームの外用による薬物療法のほか、凍結療法も行っています。

バルトリン腺嚢胞・膿瘍について

バルトリン腺は、外陰部の下1/3の腟側方にあって、性的に興奮した際に潤滑液を出して性交を行いやすくします。
バルトリン腺嚢胞は、感染による慢性的な炎症が原因となってバルトリン腺の開口部が閉塞し、嚢胞になったもので、感染を伴うと膿瘍となって痛みを伴います。

バルトリン腺嚢胞・膿瘍の症状

原因菌には、ブドウ球菌、大腸菌、レンサ球菌、淋菌、嫌気性菌などがあります。
バルトリン腺外陰部に嚢胞ができている状態では、通常、痛みなどの症状は伴いません。しかし、感染して膿瘍を形成すると、局所的な痛みを感じますし、赤く腫れて熱感を覚えるようになります。
バルトリン腺膿瘍は、大きくなると鶏卵ほどにまで腫れあがるケースもあります。

バルトリン腺嚢胞・膿瘍の治療

バルトリン腺部にしこりが見られることから、診断は容易です。多くは片側に発生し、ほとんどの患者さまは、バルトリン腺膿瘍の状態になって痛みと腫瘤に気づいて受診されます。
手術によらない保存的治療では、抗生物質を投与します。また、必要に応じて膿瘍を穿刺または切開で排膿し、その内容液を一部採取して、細菌培養検査を行い、原因菌を特定します。
しばしば再発するため、外科的治療として、病変部を切開し、膿の排泄口をつくるバルトリン腺嚢腫開窓術や嚢胞自体を摘出するバルトリン腺嚢腫摘出術という手術が選択されます。